[後半] 立憲民主くんと佐川氏証人喚問 〜立憲主義は燃えているか?〜

(記事の前半はこちら

前半のまとめ

  • 立憲主義とは? → 行政・公務員は憲法遵守・人権尊重
  • 立憲民主党は立憲主義か? → 少なくとも党是は立憲主義
  • 立憲民主くんの立ち位置? → 立憲民主党の公認キャラ
  • 証人喚問の拒否権は? → 刑事訴追のおそれは『正当な理由』にあたる
  • 拒否は許されるの? → 憲法と法律のダブルで保障されたシステム

という感じでした。

今回は後半で、証言拒否権の行使の是非、という論点から進んでいきます。

立憲主義的に証言拒否権の行使ってどうなの?

前半のエントリーで、証人喚問における正当な理由のある証言拒否が、憲法38条1項に基づいた正当な権利であることがおわかり頂けたかと思います。

本エントリーは立憲主義がテーマです。

ここで、立憲主義に照らすなら、国民が持つ正当な権利として憲法38条1項が保証した自己負罪拒否特権と、それに基づいて作られた『由緒正しい権利』である議院証言法における証言拒否権の行使はなんら落ち度のない適法な行為であって、そこに非難可能性(←その人をディスれる理由、ぐらいに思っておいてください)はまったく存在しないからです。

いやしくも立法者たる国会議員ともあろうものが、当該権利の行使を非難・否定するようなことは憲法99条に基づき許されず、もしそんなことをするのであれば即座に人権蹂躙・違憲の誹りを受けることになります。

ちなみに、憲法99条ではもともと全員が『公務員』に含まれるにも関わらず敢えて『国務大臣』『国会議員』『裁判官』『その他公務員』と分けて書かれています。前者三つの責任は『その他公務員』より一層重大であることがわかります。

証言がないと話が進まないから、といった質問者側の都合など一切考慮されませんし、人権保障のために、そんな行政・国家公務員側の一方的な都合など考慮されてはならないのです。

自白の強要と拷問・人権蹂躙の歴史

少し余談になりますし、憲法38条は憲法関連のエントリーで専門に割いて詳しくやる予定ですが……

古来から自白は『証拠の王様』と呼ばれてきました。今日でも、裁判において有罪判決が下される際の決定的な一撃であり続けています。

自白証拠の強力さゆえに古今東西、公権力による自白の強要、その為のおぞましい拷問が繰り返し繰り返し行われてきました。例えば、魔女裁判の拷問など、漫画や本などで一度は見聞きしたことがあるのではないでしょうか。それらは決してファンタジ・絵空事ではなく、現実に起こっていたことであり、命までは奪われずとも、殴る蹴る、身体を折り曲げた辛い姿勢で椅子に縛り付ける等のことは戦後の日本でもザラに行われてきました。むしろ、つい最近まで起こっていましたし、ぶっちゃけ今もなお日本で『稀によく行われている』と言ってしまって差し支えありません。

もちろん、自白強要の『程度』は拷問とまではいかない程度に落ちているとはいえ、相変わらず日本の警察と検察は、自白強要のために嘘をついたり、虚偽の調書を巻いたり、冤罪でも構わないから有罪にしなければならないという自己の存在証明のために国民に対して違法・違憲な検挙・不正な裁判が横行しています。

遺伝子鑑定でほぼ100%本人だ!といって有罪になったのに実は別人のものだった、など洒落にならない冤罪がつい最近も発覚しましたね?

こういった歴史的事実を踏まえて、公権力が自白強要に走らないよういくつかの『絶対ルール』が憲法に組み込まれているわけです。

そして、今回問題となったのが、まさにその憲法で保障されている自己負罪拒否特権と、それに基づいた由緒正しい権利である証言拒否権なのです。

佐川氏の証人喚問は、証言の強要スレスレでなかったか?

世の中に100%というのはなかなかありませんが、例外として、国家権力に自由な権力を与えた場合、100%、絶対に、何が何でも、百発百中、万に一つの例外もなく、必ず暴走します。権力とはそもそもナチュラルに暴走する力そのものです。そして、権力を暴走させないようにするための足枷が憲法であることは前回に説明しました。

今回、佐川氏への証人喚問の中継をリアルタイムで視聴していた人が多数おられると思います。

見ていて、どう思いましたか?

見ていたなら、思い出してください。一部の質問者たちの暴言行き過ぎとも思える態様での質問の数々を。

見ていないなら、YouTube等ででも証人喚問の映像をぜひ御覧ください。

一部の質問者が、大声で何度も怒鳴りつけることで佐川氏を萎縮させたり、恫喝するような言い回しをしていませんでしたか?

当たり前ですが、証人として呼ばれた人に何らかの犯罪の嫌疑があるからといって、人権を無視した扱いをしていいわけではありません。(憲法31条 適正手続の要求)

そもそも、裁判で有罪も確定していない人間を犯罪者扱いするが如き扱いはそれ自体が違法・違憲な言動と言えます。無罪推定の原則から、絶対にあってはならないことです。

挙句の果てに、『これで尋問を終わります!』とかドヤ顔で言い放ってる人とか、いませんでしたっけ? ハテ? 僕の気のせいでしたっけ?

証人喚問はあくまでも『喚問』であって『尋問』ではありません。細かい言葉の違いではありますが、しかし、わざわざ法が(ただでさえ多いテクニカルタームを殊更に)用語を分けてでも伝えたかった趣旨に配慮するのが立憲的な思考であり、国家から国民に対する人権配慮意識とともに、その前提として求められる立憲主義であるところの憲法99条の誠実な実行なのではないでしょうか?

「だって、必要があるから(証言拒否なんて認めない)」

「だって、(恫喝・大声で脅さないと)答えてくれないから」

この考え方が、まさに、絵に描いたような人権蹂躙なのです。

もし、人権保護規定がなければ?

ここでもし、憲法の人権保護規定がなければ、あるいは立憲主義でなく行政・公務員に憲法遵守義務がなければ、果たして今回の証人喚問はどうなっていたでしょうか?

今回のテーマである証言拒否権がもしなければ?

国会議員という権力をカサに着たとどまることのない暴力によって、佐川氏は好きなことを喋ることもできず、拒否も許されず、沈黙はイエス!とばかりに、本人の意図しない、真実性に乏しく先ず結論ありきの決めつけた有りもしない『事実』を次々に認定されて、まるで小学生がやる学級裁判のごとく証言台に立つ者の発言など一切考慮されずに『佐川はクロ』と認定されていたのではないでしょうか。

「イヤイヤ、全国民の代表である国会議員で構成される国会なのだから、平等にジャッジしてくれるよ!」

「俺たちの◯◯さんは権力を振りかざしたりしないよ!」

そうだといいですね。

そうであることを願います。

立憲主義であるのならば、そうあるべきなのです。

サテ。話を戻しまして、立憲民主くんの発言を振り返りましょう。

立憲民主くんの発言


ここまで読まれてきた貴方には、もう、お分かりいただけるかと思います。

証人喚問において、刑事訴追のおそれを理由に証言拒否することは法が許す正当な権利です。

そして、このルールの大本を辿ると、これは憲法38条1項に基づいた由緒正しい人権保障のための規定であることがわかります。

正当な理由を以って証言拒否することで直接的な不利益を被るものではないのです。

直接的な不利益を被るのであれば、憲法や法の趣旨を没却することになってしまいます。

正当な理由に基づく拒否をされるのは『逃げ』ではなく『法で保障されている基本的な防御』であって、単に『質問がマズかった』ということでありそれによって事実が『真偽不明(ノンリケット)』となったのであれば、『疑わしきは罰せず』の原則に基づいて佐川氏を「クロと断定するだけの証拠を積み上げることができなかった」という残念な結果に着地することになります。

結論として、立憲民主くんの当該ツイートは到底立憲主義に根ざしたものではないと言えます。

立憲民主くんは公務員なのか私人なのか

問題は、立憲民主くんのTwitterの『中の人』がどういう法的地位の人なのか、という所に掛かってきます。

憲法遵守義務の存否の問題です。

私人なのか公務員なのか、あるいは『みなし公務員(準公務員)』なのかはわかりませんが、公務員なら憲法遵守義務がありますし、みなし公務員でも一定程度の憲法遵守義務を負うケースが多いです。

ただ、みなし公務員については、こういう業務だからみなし公務員!という話ではなく、雇主(公的団体)の意図・具体的な契約内容・業務内容から総合衡量して判断されるものであります。

立憲民主くんはみなし公務員と言えるのか?

政党の公認キャラクターとしてSNSで広報活動を担当する者が私企業・私人であった場合、みなし公務員として扱われて一定の憲法遵守義務が発生するのか?

こういうのは役所に確認するのが一番です!^^(大概、法解釈による、という回答になるのですが……)

公務員法絡みのことは法務省ではなく総務省が管轄ですので、総務省にお電話。

総務省「仰る通り、みなし公務員になるかどうかは公的団体それぞれの具体的な雇用意図・契約・業務内容・業務規程などによって決まりますので、SNSで炎上する発言をしてその内容が憲法に反しているとしても、直ぐにみなし公務員だから違憲な発言だ、という話になるわけではありません」

お忙しい中ご対応ありがとうございました。だいたい、想像通りの回答でした。

立憲民主くんはみなし公務員と言えるのか?につきまして真偽不明(ノンリケット)とさせて頂きます。

ズバッと言えなくてすみません。

長くなりましたが、次が結論です!

結論:立憲民主くんの当該発言は少なくとも立憲主義ではない

立憲主義そのものは単なる概念であります。よって、発言主体の法的地位を問わず、イズム(主義)・スタンスの問題であると解されます。

前述のとおり、証言拒否を否定するにとどまらず証人にとって不利益となる事実を一方的に認定する行為は、憲法の理念である人権保障から程遠い、立憲主義とは真逆の思想に基づいた発言であると言えます。

ただし、公務員が負う憲法99条義務に基づいた憲法38条1項遵守義務違反の発言になるのかどうかは立憲民主くんが私人か公務員(あるいは準公務員か)という問題であって、また別の話になってきます、ということ。

以上。

立憲民主くんの不適切とも思える発言をベースに、立憲主義について思いを馳せてみました。

如何だったでしょうか?