[前半] 立憲民主くんと佐川氏証人喚問 〜立憲主義は燃えているか?〜

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上記のツイートが、憲法38条1項違反だ!ということで爆裂炎上しております。

今回は、この事例を通して立憲主義と憲法38条1項および証人喚問における証言拒否権とその根拠について考えてみます。

お話の前提:立憲主義って?

立憲主義といっても古今東西様々なものがあるのですが、我々は2000年以降、具体的には現在2018年に生きておりまして、この場合で考えるべき立憲主義というのは『近代的立憲主義』と呼ばれる概念が妥当でしょう。

立憲主義とは、専断的な国家による支配から国民一人ひとりの権利・自由(これが『人権』と呼ばれるものです)を守るために、人権擁護を趣旨とする憲法を定めることによって国家の権力を一定限度に制約しようというものです。

憲法は原則として、国家が国民になにかするときのルールなわけです。(よって、私人の間では憲法は直接には適用されません。よく誤解されがちですが……)

端的に表現しますと、以前のエントリー(立憲とは? 立憲主義とはなんなの? 民主主義との違いは?)でも書いたとおり、立憲主義とは『憲法を(実質的)最高法規と定めて、国は憲法に従って誠実に政治を行っていくんだぞ!という考え方』を言います。

ここから分かる通り、立憲主義に立脚するということは、行政・国家公務員は憲法を遵守して(憲法)常に国民の人権に配慮した行政・政治運営を行わなければならないのです。

この絶対原則は、日本国憲法に於いては99条に『天皇又は摂政及び国務大臣、国会議員、裁判官その他の公務員は、この憲法を尊重し擁護する義務を負ふ。』という形で定められています。

立憲民主党はそもそも立憲主義なのか?

立憲民主党の基本政策 > 国のかたち にて以下のように書かれています。(URL:https://cdp-japan.jp/policy/01

立憲主義に基づき権力に歯止めをかけ、国民の権利を守る観点から、憲法及び関連法について議論します。その上で、国民にとって真に必要な改定すべき事項について検討します。

民主主義に不可欠な情報アクセス権、報道の自由など表現の自由を守るとともに、人権としてのプライバシー権を確立します。

はっきりと、立憲主義に基づき、と宣言していますね。

立憲民主主義国家である日本国における政治結社や国会議員(公務員)が憲法を尊重して擁護するのはある種、他人から言われなくても、自ら言うまでもなくもはや当たり前のことなのですが、その上でわざわざ立憲主義を標榜している以上は、他の政党以上に厳格なスタンスで日本国憲法と真っ直ぐに向き合い、特に人権保障規定に違反する言動など絶対にあってはならない、許されないことになります。

ましてや、その違反が一見して明白に憲法に違反している(違憲)ような言動は絶対にあってはならないことです。

さて、立憲民主党は党のイズムとして立憲主義を基本としている事がわかりましたが、次は立憲民主くんについて検討してみたいと思います。

立憲民主くんの立ち位置は?

立憲民主くんは、元々は『民主くん』という民主党(立憲民主党の前身)の公式キャラクターでした。そして、2016年4月に一旦活動休止・引退しているようです。(理由をウィキペディアで調べてみたところ、引退の理由としてはニコニコ動画で負けたからと書いていますが……ほんまかいな(汗))

そして、立憲民主党の発足に伴い、リッケンバッカー(エレキギターを主力商品とするアメリカの楽器会社)のギターを持った民主くん、即ち『リッケン』+『民主くん』=『リッケン民主くん』というダジャレによって華々しく復活します。ネーミングセンスに疑問を感じざるを得ないですが気にしないことにします。

立ち位置としては、立憲民主党の公認キャラクターということです。

そして、公認を受けているキャラクターということは、社会通念に照らすと党の広報の一部を担当していると解釈するのが自然といえ、党の指揮権に一定程度服しておりその発言内容に対する一定のチェックとコントロールが可能であろうことや、党の基本的政治思想に基づいた発言をしているであろうことが強く推認されます。

ここでは、立憲民主くんは立憲民主党の政治思想をベースに、党の管理・チェックを通った上でツイートを行っているという前提で話を進めていきます。

佐川宣寿氏の証人喚問において、刑事訴追を理由に証言拒否することの正当性は?

この話の前提知識となるのが『議院証言法』における『証人喚問における宣誓』と『罰則規定』です。それらを経て、メインである『証言拒否権』とそれに付随する『憲法38条1項(自己負罪拒否特権)』の概念を解説します。

議院証言法

証人喚問のルールを定めた法律として『議院における証人の宣誓及び証言等に関する法律』というものがあります。略称は議院証言法と言います。この法律の中に、証人喚問における宣誓や罰則規定、証言を拒むことができるケースが記載されています。

証人喚問における宣誓

第一条の五 証人には、宣誓前に、次に掲げる事項を告げなければならない。
一 第四条第一項に規定する者が刑事訴追を受け、又は有罪判決を受けるおそれのあるときは、宣誓又は証言を拒むことができること。
二 第四条第二項本文に規定する者が業務上委託を受けたため知り得た事実で他人の秘密に関するものについては、宣誓又は証言を拒むことができること。
三 正当の理由がなくて宣誓又は証言を拒んだときは刑罰に処せられること。
四 虚偽の陳述をしたときは刑罰に処せられること。

第二条(略)

第三条 宣誓を行う場合は、証人に宣誓書を朗読させ、且つこれに署名捺印させるものとする。

証人だけでなく国会議員全員が、宣誓における当該ルールを前提にして証人喚問を進めていくわけです。

第一条の五の一号でしっかりと『刑事訴追を受けるおそれがあるときは、宣誓または証言を拒むことができる』と書かれていることがわかります。

そして、第三条に基づき、佐川氏は宣誓書を朗読し、署名し、捺印しています。

罰則規定

第六条 この法律により宣誓した証人が虚偽の陳述をしたときは、三月以上十年以下の懲役に処する。
二 (略)

第七条 正当の理由がなくて、証人が出頭せず、現在場所において証言すべきことの要求を拒み、若しくは要求された書類を提出しないとき、又は証人が宣誓若しくは証言を拒んだときは、一年以下の禁錮又は十万円以下の罰金に処する。
二 (略)

懲役まであるかなり重い罰則規定が用意されていることがわかります。

佐川氏からすると、適当な嘘を答えることはそれ自体が別個の犯罪を構成するわけで、防御権として与えられている『正当な理由に基づく証言拒否』をするしかないわけです。

証言拒否権

話が前後しますが、前項のとおり、基本的に証人は宣誓によって真実を答える義務を負っております。

しかし、これには例外がありまして、公法上、民事裁判・刑事裁判・証人喚問という3つのシーンにそれぞれおいて、証言を拒むことが出来る『正当な理由』が定められています。

今回でいうと証人喚問ですが、この『正当な理由』という証言拒否事由に該当すれば証言者に証言拒否権が発生し、それを行使すれば証言を拒否できるわけです。そして、権利行使を批判する行為は失当なものであって、もしそれを行政・公務員が行うことは人権蹂躙の誹りを免れることはできないものであります。

証人喚問における証言拒否権

第四条一項 証人は、自己又は次に掲げる者が刑事訴追を受け、又は有罪判決を受けるおそれのあるときは、宣誓、証言又は書類の提出を拒むことができる。

四条一項において『自己が刑事訴追を受けるおそれがあるとき』と書かれています。宣誓でも同趣旨のものがありましたが、今回、佐川氏はまさにこの『刑事訴追を受けるおそれ』という正当な理由に基づいて証言を拒否したわけです。

では、なぜ訴追する側にとって非常に不利となる、証人の証言拒否権というシステムがあるのでしょうか?

証言拒否権は憲法38条1項由来の由緒正しい権利

憲法38条に、次のようにあります。

第三十八条 何人も、自己に不利益な供述を強要されない。
二 強制、拷問若しくは脅迫による自白又は不当に長く抑留若しくは拘禁された後の自白は、これを証拠とすることができない。
三 何人も、自己に不利益な唯一の証拠が本人の自白である場合には、有罪とされ、又は刑罰を科せられない。

憲法38条1項(何人も、自己に不利益な供述を共用されない)を指して『自己負罪拒否特権(じこふざいきょひとっけん)』といいます。

よく知られる『黙秘権』とは実は似て非なるシステムです。

参考:黙秘権

黙秘権とは、刑事訴訟法の198条2項(被疑者取調べにつき検察官は被疑者に対し、あらかじめ、自己の意思に反して供述をする必要がない旨を告げなければならない。)および、刑事訴訟法291条3項&311条1項(自己にとって不利益かどうかを問わず、終始沈黙し又は質問に対し陳述を拒むことが出来る)という法律によって保障されている被疑者の防御権の一つです。

黙秘権は、憲法38条1項(自己負罪拒否特権)を刑事訴訟法において更に一歩推し進めたものとされています。

憲法と証言拒否権

証人喚問における証言拒否権も、黙秘権と同様に憲法38条1項に由来する由緒正しい権利であると解されています。

ですので、単に法がそう定めているのではなく、憲法の要請があって法が具体的な中身として定めている権利ということで、根拠としては非常に強力なものと言えます。

いわば、証言拒否権を否定することは憲法の理念を否定するに等しい、ということです。

後半へ。

と、長くなりすぎているので後半へ続きます!

後半はこちら

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